MRPはアメリカで開発された生産管理ソフトであるが、昭和40年代から日本の機械組立工場で普及し、生産管理システムの代名詞のようになった。現在ではこのシステムは、ITの発展にともなって更なる高度化が進んでいる。そのためERPという新たな名称で呼ばれることもある。しかし実際に工場の現場を見ると、MRPが仕様すなわち能書きどおりに使われている例は皆無といってよいだろう。使われているのはごく一部の、部品展開というサブシステムや受発注システムおよび在庫入出庫システムに過ぎない。工場の製造現場で最も苦労している進捗管理については全く役に立たない。それもそのはずで、そもそもMRPには進捗管理というシステム機能がないのである。しかしMRPにはなくても、進捗管理は現場にとって不可欠である。なぜならば、製造の現場では予期せぬトラブルや例外事項が頻発するからである。したがってMRPを導入したすべての工場が、自社固有の進捗管理システムを開発している。その補強によって、MRPはやっと生産管理システムとして機能している。つまり厳密にいうと日本で使われているMRPは、もはやMRPではない。一部にMRPの部品展開システムなどを組み込んだ別のシステムになっているのである。
MRPがこのように有名無実になってしまった原因は何か。それは生産管理という実務の分野にMRP独自のイデオロギーを持ち込んだからである。MRPのシステムコンセプトは、計画通りに作らせるということである。もし計画通りに作れないとしたら理由は2つしかない。その1は計画がまずかったこと。その2は計画通り作らないこと。したがって1の対策は、計画をより一そう精緻にすること。2の対策は、計画通りにやらない現場に何らかの懲罰を加えることである。
MRPが定着しなかった理由は、共産主義経済が破綻した理由とよく似ている。すなわち5カ年計画の例でみられるように、経済を机上の計画だけでコントロールできると考えたからである。何が何でも計画通りやらせるべきという発想は、現実を無視する意味においてイデオロギーである。その意味では、計画偏重のMRPも生産現場にイデオロギーを持ち込んだことになる。うまく行かないのは当然と言えるだろう。
2007年7月30日月曜日
2007年7月15日日曜日
時間生産性と期間生産性
田口玄一氏のタグチメソッドによって、従来の品質管理ではカバーできなかった問題が解決できる。ロバスト性という概念を取り入れているからだ。その適用対象は製造現場ではなく、設計開発部門である。一方、生産管理については、私は従来型の時間生産性とは違う期間生産性概念を主張している。時間生産性は単位作業に要する時間の短縮がテーマだが、期間生産性は違う。特定の工程における仕掛品の滞留時間を問題にする。つまり時間生産性と期間生産性はイコールではない。しかしまだこの考え方は十分には浸透していない。タグチメッソドのようになっていないのは残念だ。そのくせSCMは近年の最大のテーマだ。スローガンや事例は無数にある。しかし肝心の期間生産性という概念に触れる論議はまったく行われていない。
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