民主党が政権を勝ち取って以来の、この9年間はまるで悪夢であった。なにしろ最高指導者であるべき首相の座に収まったのが、稀代の愚者と、札付きの狡智者の二人であったからだ。これに従う閣僚もろくな人材がいなかった。今まで野党の立場から評論だけやってきて、それが政治と思い込んでいたのだ。しかし実務を担当させると、忽ち無能さを露呈することになった。この事態を招いた最大の戦犯は、紙面をあげて彼等を支持したマスコミだ。ただし自民党にも問題はあった。その多くが地域エゴの代弁者であったり、産業や職種別利益の擁護者に過ぎず、国全体の立場で考えることが少なかったからだ。
それにしても。現在の民主党代議士の関心事は専ら政局であって、政策についてはそれを考える能力がない。国民の利益が第一とか、原子力発電を止めるといった程度のことを政策と思い込んでいるが、そんなものは単なるスローガンだ。いやしくも政策と言うからには、内容にもっと具体性と体系性がなければならない。更には時間表も必要だ。しかし現在の民主党代議士に、それを求めるのは無理だろう。関連する専門知識や教養が、あまりにも不足しているからだ。
この八方ふさがりの日本の政治を、打開するにはどうしたらよいか。本質的には即効薬はないだろう。地道に政治環境を高めていくしかない。しかし現実の政治は、一日と雖も停滞することが出来ないのだから、次善の策を考えざるをえない。それは民主党と自民党の中にいる人材を引き抜いて、新しい政党を編成することである。
幸か不幸か民主党政権のおかげで、政治家を評価する国民の鑑識力も大いに高まった。この時点で総選挙を行えば、たぶん好ましい結果が生まれるのではないだろうか。もはや無責任なマスコミのアジテーションも通用しないと思われるからだ。
田中一成 雑想の森