桜井よしこの表現を借りると、中国は「異形の国」である。この国が惹き起こす数々の事件や問題を想起すると、まさにぴったり当てはまる。たとえば5月2日の産経新聞は、次のように報じている。
“中国「童工」市場 ”
中国広東省東莞市の電子工場などで、四川省涼山彜族自治州の農村からだまされて連れて来られた子供が強制労働に従事させられていたことが、広東省地元紙・南方都市報の調査報道で明らかになった。同紙の28日付以降の一連の報道によると、広東省一帯には、「童工」と呼ばれる未成年労働者の大規模な市場があり、この5年にわたり数百人が売られてきたという。多くが9歳から16歳の未成年。時間給3・8元以下と同市規定の最低賃金下回る賃金で、月360時間もの長時間労働を強制され、賃金の3分の2は仲買人らに搾取されていた。食事も数日に1回しか与えられず、少女だと仲買人らにレイプされたり、逃げた少年が殺害されたケースもあったという。
報道をうけて東莞市警察は捜査に乗りだし、2日までに100人以上の子供たちを救出。売買にかかわった15人の容疑者を拘束しているという。中国では昨年6月、山西省臨汾市洪洞県のレンガ工場で大規模な未成年強制労働事件が発覚。これまでひた隠しにされてきた「世界の工場」の違法労働力市場の実態が明らかになってきている。このような事件は、他の文明国ではありえないことだ。しかし驚くべきことに、新興大国を自負する中国では現実に起きている事件なのだ。
いまや中国は、経済や軍事の面では一流国になったと自負している。さらに文化の面でも、一流国の仲間入りをしたいらしい。北京オリンピックの開催と成功に、あれほどこだわるのもそのためである。たしかに着々と実績を積み上げているその実績は、認めなければなるまい。
しかし、その一方でこの国に対する抜きがたい不信感と違和感は、何に由来するのだろうか。たとえば最近の生々しい記憶では、毒入りギョウザ事件がある。上で転載した強制労働事件も中国なら、あっても不思議ではない。また年間を通じては、何万件にも及ぶ高級役人による汚職事件がある。その一方で産業界では、平気で外国のブランド品をコピーし、これで大もうけしている。
これらの先進国の常識を覆す奇怪な事件のすべてに、中国政府が関与しているわけではないし、奨励しているわけでもあるまい。むしろ最近では、その防止にかなり努力してことも認めなければならない。それにも拘らずこのような問題を根絶できないのは、国民を統率する能力がないのだろうか。
どうもそうではないらしい。少なくとも政治と外交の面では、恐ろしいほど徹底した統率が行われている。ありとあらゆる反政府的思想や行動は、完全に封殺されている。その数々を述べるのは省くが、たとえば法輪功グループに対する弾圧などは、とても先進国では考えられない。外交もそうだ。日本攻撃のために取り上げてきた靖国神社参拝への非難攻撃の激しさはどうだ。また尖閣諸島周辺では、日本の領海内にある場所で勝手に油田の採掘を行っている。要するに政治や外交における国論の統率は鉄壁ともいえるのだ。しかしそれ以外の経済、道徳、文化などについては全くの後進国なのである。このアンバランスは、他の文明大国では全く見ることができない。中国が、異形の国と揶揄される所以であろう。
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