2007年11月4日日曜日

本が売れない

  いま出版業界は危機状態にあるという。年間5億冊も出荷しながら、その38%は返本されるらしい。その一方で種類は増えているので、一題目あたりの冊数は少なくなっている。そのため量産効果が出ないので、コストアップにもつながる。かくして多くの出版業者は赤字経営を余儀なくされている。このままでは日本の文化は衰退してしまう。何故このように本離れが進んでしまったのか。大いに気になるので、その原因を考えてみた。
  第一は、本来は主要な顧客であった若い読者の本離れが進んでいる.その一方で彼らの情報源は、もっぱらテレビに偏っている。
  第二は内容の斬新性がなくなっている。たとえば私の専門は経営管理だが、この十年来、魅力的なコンセプトや革新的なテクノロジーにお目にかかったことがない。目立つのは内容の薄いトピックスばかりだ。最近では企業買収や三角合併の解説書が多かったが、それもITがらみと同じように、今では下火になっている。原因の一つは、出版人がサラリーマン化して出版という仕事に情熱を失ったからではないだろうか。新しい著者やテーマを発掘しようという気迫がない。ちょっとでも売れ行きのよい本を見ると、すぐそれを真似て同じような企画をする。リスクを恐れるあまり、柳の下で二匹目の泥鰌をねらうだけだ。
  第三は日本の社会全体が、一種の弛緩ともいうべき精神状態になっている。たとえば中高年といわれる世代には、いわゆる燃え尽き症候群の気分が横溢している。また若者たちは一種のペシミズムに冒されている。このような時代環境のもとでは、知的好奇心が高まるはずがない。読書の原動力は知的好奇心だが、その知的好奇心は読書によっていっそう加速される。この好循環が失われてしまったのだ。

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