2012年5月3日木曜日

中国動乱の前兆か



 今週(4月25日)のニューズウイークは読み応えがあった。「不安な中国」と題して、重慶市トップであった薄煕来氏の失脚劇を分析した特集記事である。何しろ共産主義国の政治は、中国に限らずロシアや北朝鮮でもみられるように、殆ど密室で行われる。そのため予想外の事件が突然発生する。いや公表されると言うべきだろう。それ以前に事態は密やかに進行し、決着がついた後に明らかにされるのである。つまりこのような国の実態は、表面で見る限りは何も分からない。
 これに対して自由主義国家の権力争いは実に分かりやすい。そのプロセスの大部分が公開されるので、醜さや愚かさまでマスコミを通じて、白日の下に曝されるのである。そのための弊害もないわけではない。しかし共産主義国のように、政治が秘密裏に行われるのと比べると、その好ましさは比較にならない。
 薄煕来の失脚を予感させる事件も、我々はごく最近までまったく知らなかった。それまでの長期にわたる水面下の暗闘は、4月6日になって初めてその姿を現すことになった。この日、中国重慶市の王立軍副市長が、四川省成都の米総領事館を訪れて館員と面会したことを明らかにしたのである。亡命準備との見方もあるが、真相はわからない。
 しかしこの事件をきっかけに、恰も一枚岩のように見える中国の政治も、表向きはいざ知らず、裏側ではかなり際どいものだということが分かった。ニューズウイークの記者によると、今回の事件は、胡錦濤や温家宝が属する共産主義青年団派閥と、薄煕来が属する太子党派閥の争いとは言えないようだ。かねてから野心家で煙たがられていた薄煕来個人を失脚させるために、周到に準備された追放劇であったらしい。
しかし共産主義青年団派閥と太子党派閥の間には、こだわりや不快感は全く無いのだろうか。私はそうは思わない。この両派閥の政治理念と利害関係はかなり違うのである。しかしこの国では、その違いを巡る争いを公にすることは決してない。全ては密室で行われる。そして決着がつくと、勝者は高らかに自らの政治路線を称揚し、敗者に対しては恰も犯罪者のように貶めの言辞を投げつけるのである。私は薄煕来氏の失脚劇を一過性の事件とは思わない。いずれ近いうちに、中国全体を動揺させる政治闘争が始まることを予感する。



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