2011年7月4日月曜日

日曜美術館の司会者

 NHKの番組には、公共放送にあるまじき偏向思想に基づくものが多い。そのため私はあまり視聴しないのだが、日曜美術館だけは大いに珍重していた。ただしそれは以前のことで、最近はすっかり遠ざかっていた。理由は、司会者として姜尚中が起用されたからだ。美術にはまったく素人であるハズの政治学者が、あのビロードの声と称される不気味な低音で、見当違いの感想を述べ立てるのを聞くと、本当にいやになる。初めてこの番組に、彼が登場したときのショックは大きかった。NHKの御都合主義は、ここまで墜ちたのか。以来、私はこの番組を一度も見たことがない。最近になって、ようやくメンバーチェンジがあったらしい。大いに喜んでいる。
 ところで、上では姜尚中のことを政治学者と述べたが、本当にそうなのだろうか。実のところこの人物の学問的背景と実績がさっぱり分からないのだ。「アジアから読む日本国憲法」、「アジアから日本を問う」、「日朝関係の克服」、「悩む力」、「マックスウエーバーと近代」、「ナショナリズム」などいくつかの分野で時代迎合的な題名をつけた書籍を出版しているが、いずれも深みのないものだ。一例として「ナショナリズム」を挙げてみよう。
 この本の内容は、タイトルとはかなり離れていて、左翼的な立場に立った一種の日本批判論に止まっている。ナショナリズムの研究は、世界各国でも行われているのだから、本来はそれらも参考にして、もっと客観性のある論説にするべきだ。またナショナリズム運動そのものは、日本よりは韓国や中国でこそ活発に行われているのだから、それらについての実証的な論考も不可欠であろう。
 その一方で、政治的なスタンスは極めて鮮明だ。たとえば北朝鮮による日本人の拉致問題に関しては、「日本が拉致問題を理由に北朝鮮を支援しないならば、国際社会から孤立する。それがいやなら経済支援をやるべきだと発言している。またある会合では次のように述べた。もし横田夫妻が横にいたら、「在日同胞は過去に日本に強制連行されたのだから、北朝鮮ばかり批判するのはおかしい」と言うつもりだと。この「在日強制連行説」は、現在では完全に事実無根であることが証明されている。それを知ってか知らないでか、何れにしろ学者とは思えない偏った言説である。
 姜尚中が在日韓国人という立場と、実質的には日本人として生活している立場を、まるでコウモリのようにうまく使い分けて、ついに言論界のスターに成り上がった才覚については、ある意味では賞賛に値する。しかし情けないのは、そのような無節操や傍若無人ぶりを容認したり、持て囃す偏向マスコミの見識のなさだ。

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