2011年9月28日水曜日

上海で再び地下鉄事故発生

 盗作とコピーで急発展した中国の第二次産業も、ここにきて馬脚を現し始めた。たしかにこの十年あまりは、文房具やプラスチック製品、繊維製品などのコモディティ型製品で、世界を席巻するほどのパワーを発揮した。これらの生産は、図面と設備および単純作業に従事する低賃金労働者という3条件さえ揃えば可能になる。日本は今まで、親切にもそのうちの図面と設備の多くをこの国に提供してきた。

 しかし中国は、この程度のことで満足する国ではない。さらなる進歩と拡大を、強引に推し進めつつある。問題はその強引さの中味である。具体的に言うと、その第一は冒頭に述べたコピーと盗作。第二はソフトの省略ないし無視である。極言するとこの国には、ソフトの意義を正当に評価し理解する能力がないのではないだろうか。
 ではソフトとは何か。簡単にいうと、それには二つの意味がある。その1は、ハードとしての製品を動作させるプロセスつまりソフトウエアである。それにはアルゴリズムや制御の仕組みが必要になる。一般にこれらのソフトは、単体製品には内蔵されているので、問題が顕在化することは少ない。しかし複数の製品を組み合わせて構成するもの、すなわちシステム製品となるとそうはいかない。全体を制御する膨大なソフトが必要になる。それだけではない。そのソフトを使いこなす専門技術やメンテナンス技術も必要になる。これを習得するには綿密なカリキュラムに基づくトレーニングも欠かせない。現在の中国には、明らかにこれらが欠けている。上海で起きた地下鉄の事故は、まさにこれに該当する。先般の中国新幹線の事故と照らし合わせると、十分に納得できるだろう。
 さらにもう一つ。高速鉄道や地下鉄などの先端システムを活用するには、それを利用する側のソフトウエア、言い換えれば広義のヒューマンウエアが必要になる。これを言い換えれば民度ということになる。日本では地下鉄のダイヤは2分間隔である。こんな神業のようなことがどうして出来るか。もちろん無人の電車を走らせるなら、1分間隔でも可能だろう。しかし大量の乗客をさばいて乗せるとなるとそうはいかない。中国であれば、10分間隔でも難しかろう。なぜなれば乗客は我先にともみ合いへし合い、大混乱を惹起するからだ。それを整然と行うには、乗る側のマナーや自制心が必要だ。言い換えれば、民度の高さが必要になる。この点では、中国でハイテクノロジーシステムが定着するには、相当の年月が掛かるだろう。
 以上の2点を等閑にしたまま、コピーした高度なシステム製品を輸出すると高言するのは、認識不足も甚だしい。

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