2011年10月25日火曜日

NHKの改革

NHKの次期経営計画が10月25日に議決された。その最大の目玉は、受信料の10%還元である。経営委員会がこれを強調する理由は、NHKが一般の企業よりコスト意識が低いからだという。たしかにこの指摘には一理がある。そして、この問題は日本の公益企業に共通する問題でもある。嘗ての国鉄、電電公社、日本航空などはその典型的な例といえよう。しかしNHKの問題についていえば、それだけではない。ここでは特に、そのうちの2つについて指摘しておきたい。
 その1は、NHKは公共性に反する偏向放送を行っていることである。そうなってしまった原因は、この組織全体が自らの公共的使命について誤解しているからであろう。結論からいうと、NHKが守るべき公共性の範囲は、日本の国内に止めなければならない。その範囲は、政治形態の違いを含む世界全体ではないのである。理由は言うまでもあるまい。NHKが行っている放送というメディアサービスの料金は、日本以外の国からは徴収していないからだ。
では何をもって偏向放送というか。それについては、あまりに事例が多いが、ここでは二、三の事例を挙げるに止めよう。
1989年に中国でおきた天安門事件では、「クローズアップ現代」の国谷キャスターが、この事件では市民や学生には一人の死傷者もなかったと報じた。これは明らかに中国の意向に副うものである。しかしこのようなウソ放送に対しても、公共放送のNHKには、何らのおとがめがないのである。また中国の漁船が日本の巡視船に体当たりした尖閣事件では、それに憤慨した3000人が渋谷で抗議デモを行ったが、NHKは全く報道しなかった。ロイターやCNN、BBCなど外国のメディアは挙って放送したにも拘わらずだ。
 その2は単に料金を引き下げるだけでなく、コストの内容も公表するべきである。例えばマンネリ化している韓国ドラマを延々と続けるために、年間いくら支払っているのか。また、中国政府が行っている政治キャンペーンのお先棒を担いだ番組がやたらと目につくが、これについてはどの程度の取材費を払っているのか。番組の趣旨からして、むしろ宣伝代行料として相当金額を受け取るべきだが、果たしてどうなっているか。その他アメリカ大リーグに支払っている代金や、科学番組、大型ドラマなど膨大な購入費を使っているはずだ。公共性を言うなら、それを秘密にする理由は全くない。すべてを明らかにしてほしい。これらを明らかにする一方で、NHKが自前で制作している番組がどの程度あるのか。番組のコストと、視聴率の両面で知らせてほしい。
 その他チェック項目はいくつもあるが、取りあえず上の2項目を明らかにするだけでも、公共放送を自認するNHKの問題点が検証できるだろう。さもなければ、この何年かにわたって視聴者が感じてきた欲求不満は解消できないだろう。

0 件のコメント: