2011年10月10日月曜日

魅力を失った書店の売り場

 久し振りに丸善を覗いてみたが、どのコーナーにも読みたいと思う本が少ない。とくに新刊書の平置きコーナーに並んでいるもので、魅力を感じさせるものは殆どない。いま流行りの若手が書いた小説など、帯に書かれているキャッチフレーズを一瞥するだけで、うんざりさせられる。ひたすら奇を衒っているだけだ。文学の奥深い香りを感じさせるものは全くない。目を転じて経営・ビジネス書のコーナーを見ると、これはさらに寂しい。経済混迷期の今こそ新しい提案やヒントがほしいのに、経営学者や経営コンサルタントなどの専門家は何をやっているのだろう。尤も経営学ブームの先駈けとなったアメリカ型経営の退潮を見れば、やむを得ないのかもしれないが・・・。一時期は、リーマンショックなどに関連して、強欲な欧米金融業界の内幕ものが派手な装いで書棚を賑やかにしたが、今はそれも姿を消した。片や哲学・思想・政治関係では、古典ばかりが目立つ。多少は面白そうに思われるのは、民主党政治の出鱈目を糾弾している内幕ものだ。たとえば菅前首相の無能ぶりや人柄の悪さを暴いたものなどは、反面教師として読まれているのだろうか。この一角の山積みだけが、大きく凹んでいる。つまり、よく売れているらしいのだ。それにしても、読者というものは同じようなことを考えるものだ。

 出版業界では、不況の原因をインターネットや新しいメディアのせいにしているが、最大の原因は、別のところにあるのではないか。今まさに進行中の社会の激動の実態を正しく把握し、その進むべき未来像を描くために、何らかの指針を与えてくれる著作品がないのである。それは換言すれば、出版に携わる著者や編集者などの見識や能力の問題でもある。この人たちが新たに充電し直すか、新鋭メンバーと交代しない限り、これからさき出版業界が活況を呈することなど、全く期待できない。

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