1) 何が経済問題か
経済について、学者、エコノミスト、経済記者などが論じるキーワードは、何故あのように画一的なのだろう。いわくGDP成長率、いわく為替相場、いわく失業率、いわく株価、そして最近では格差と富の配分率!
いわゆる経済専門家はこれらの限られた数値だけで、その上がり下がりを予測したり、結果を分析したりしている。しかし的中することは殆どない。だからといって非難されることがないし、本人達もそれを謝罪したり弁解することもない、発言はすべてその場限りのことで、だれも気に掛けない。
経済学について私は全くの素人だが、それでも生活を営んでいるわけだから、これらの言説について、関心がないわけではない。むしろ人並み以上に気に掛けている。しかし繰り言になるが、知りたいこと、教えてほしいことへの回答がほとんど得られないのだ。全くいらいらしてしまう。
では何が知りたいのか具体的に説明しよう。たとえば昨年、世界の人口は70億を超えたという。この途方もない事態は、我々の将来にどんな影響をもたらすのだろうか。地球規模で考えるのはあまりに大きすぎるので、取り敢えず日本への影響について考えてみたい。
それには、まず先進国と後進国(途上国も含む)の人口分布とGDPを知りたい。国連の定義によると、一人当たりの国民所得3万ドル以上が先進国である。これに該当するのは上から順に、ルクセンブルグ、ノルウエー、カタール、スイス、アラブ首長国連邦、デンマーク、オーストラリア、スウェーデン、オランダ、アメリカ、カナダ、アイルランド、オーストラリア、フィンランド、シンガポール、ベルギー、日本、フランス、ドイツ、アイスランド、クエート、イギリス、イタリア、ニュージランド、香港、スペインの26カ国である。次に、その26カ国の総人口およびGDP年間総額を知りたい。調べた結果は次の通りであった。
(国 名) (GDP/人/ドル) (総人口:万人) (GDP:兆ドル)
1)ルクセンブルグ 10万9千 50 0.05
2)ノルウエー 8万4千 500 0.42
3)カタール 7万4千 170 0.13
4)スイス 6万8千 300 0.48
5)アラブ首長国連邦 5万8千 600 0.35
6)デンマーク 5万6千 600 0.34
7)オーストラリア 5万6千 2200 1.20
8)スエーデン 4万9千 900 0.40
9)オランダ 4万7千 1700 0.80
10)アイルランド 4万6千 400 0.19
11)アメリカ 4万6千 31000 14.30
12)カナダ 4万6千 3400 1.56
13)オーストリア 4万5千 2200 1.00
14)フィンランド 4万4千 5300 0.23
15)シンガポール 4万3千 500 0.21
16)ベルギー 4万3千 1100 0.47
17)日本 4万3千 12600 5.50
18)フランス 4万2千 6300 2.60
19)ドイツ 4万1千 8200 3.40
20)アイスランド 3万9千 300 0.02
21)クエート 3万7千 270 0.10
22)イギリス 3万6千 6200 2.20
23)イタリア 3万4千 6100 2.10
24)ニュージランド 3万2千 400 0.17
25)香港 3万2千 700 0.24
26)スペイン 3万1千 4600 1.42
以上のデータを見て、先ず気になることは第1位のルクセンブルグの人口が僅か50万人に過ぎないことだ。人口1億人を超える国と、50万人に過ぎない国のデータを同列に並べて論じる意味はないと思う。私はこの考え方に基づき、概ね2000万人以上の国を対象にして考えることにした。このフィルターにかけると、該当する国は11カ国である。なお補足すると、上表で1億人を越える国はアメリカと日本の2国しかない。
もう一つのフィルターは年間のGDP総額で、これが2兆ドルを越える国を経済大国と考える。データによると該当するのは6国である。
以上の2条件、すなわち人口条件とGDP条件に加えて、一人当たり年間国民所得3万ドル以上という基本条件をクリアーできる経済大国はアメリカ、日本、ドイツ、フランス、イギリス、イタリアの6カ国しかない。さらにイタリアは今や財政危機にあるので、これを除外すると5カ国になってしまう。この5カ国の人口は6.63億人である。そして、それが世界人口に占める割合は、6.63億人÷70億人によって計算できる。値はわずか9.5%だ。一方、5カ国のGDPが全世界のGDPに占める割合は、28.0兆ドル(14.3+5.5+3.4+2.6+2.2)÷63.0兆ドルによって計算できる。答えは44%である。つまり10%に満たない人数で、全世界におけるGDPの44%を支えていることになる。ただしこの極端な偏りは、いまに始まったことではない。おそらく19世紀後半から始まっていることで、もっと偏りがひどい時代もあった。それに比べると現在は、偏りが急速に緩和されつつある。実は、その緩和に進む早さこそが、これからの大きな問題になるのである。
2) 偏りが急速に緩和される理由は何か
結論からいうと、世界におけるGDPの偏在緩和、つまり平準化をもたらす要因は2つある。その第一は中国およびアジア諸国の生産力増大であり、第二はそれに誘発される後進国の需要増加である。ここでいう後進国とは、アジアだけでなくアフリカも含まれる。
この動きの発端は中国の経済自由化と、それを活用しようとするアメリカの政策から始まった。しかも、その規模は予想以上に拡大した。なにしろ中国は人口13億という、桁外れの低賃金に裏打ちされた生産力である。しかも知的所有権など、平然と盗み取るお国柄である。そのためアメリカの産業、とくに第2次産業はミイラ取りがミイラとなる仕儀となった。結果としてコモディティ製品(日用雑貨)の殆どが中国に依存せざるを得なくなっている。低価格の中国製品は、さらに欧州市場を席巻し、ついには日本にも浸透した。今では、中国は世界の工場と言われている。この勢いとやり方は他のアジア諸国にも波及している。インドやベトナムがその好例である。
生産力が高まると、それと平行して労働者の雇用機会は増大する。そのため平均所得の水準も向上する。今や後進国では、このような好循環プロセスが普通になってきた。ちょうど日本が敗戦の混乱から立ち上がり、次第に景気がよくなり始めた時期の状況とよく似ている。その後のいわゆる史上稀な日本の高度成長は、半世紀近くも続いた。しかし現在の経済環境と技術環境を考えると、これらの後進国の平均所得が年間3万ドルを越えるのは、20年を待たずして達成できるだろう。つまり世界の国別所得格差は、予想以上に早く縮まると考えられる。
この後は、たぶん以下のような疑問が生じるはずだ。
3)偏りがなくなればどうなるか
4)先進国の経済はどうなるか
アメリカ
ドイツ
フランス
イギリス
日本
5)日本どうすべきか
以上の3項目については、未だ十分には考えを纏めていないので、今日はこの辺りで筆を止めておく。諸賢兄の御意見や御見解をぜひお伺いしたい。
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