2012年2月24日金曜日

素人が気にする経済問題(4)

4 輸出立国でなく、内需立国をめざす

 日本のGDPに占める貿易依存の割合は、以下のデータが示すようにかなり低く、わずか0.7%に過ぎない。
              GDP(A)      輸出額        輸入額      純輸出     純輸出/A
米      14,270.000      994,700    1.445.000   -450.300    -3.2%
独        3.235.000   1.187.000       931.300   255.700      7.9%
仏        2.635,000      456.800       532.200    -75.400     -2.9%
英        2.198.000      351.300       473.600  -122.300     -5.6%
日        5.049.000      526.300       490.600      35.700      0.7%
                (2009年度 単位$1,000.000)
 したがって、本来は円高や円安に一喜一憂する必要はないのである。その意味で現在の円高は、日本が持っている経済力の強さが、正当に評価されているとも言えるのである。たとえば失業率が5%程度に止まっているのは、その証左であろう。この値は他の先進4カ国にとって、まさに垂涎の的といえよう。
 これから先も、日本は輸出の増加にそれほど努力する必要はない。上では日本文化の精髄を輸出せよと述べたが、それは貿易収支の向上を図るものではなくて、別の目的のためである。つまり文化国家としての存在感と、優位性を高めるのに意義があるからである。日本にとっての貿易収支は、経済的な意味での死活問題ではない。文化先進国ないし文化大国としての存在感を高めることを第一義にすべきである。そのためにも、高度な内需の振興にこそ力を入れるべきであろう。

5 保有資源の再確認と再定義を行う
 従来の日本は、鉱物資源(石油を含む)に恵まれない国とされてきた。さらに近年は、食糧自給率の低さも問題になっていた。しかし最近になって、幾つかの好ましい条件が整い、むしろ恵まれた国になりつつある。
 たとえば石油に代わるエネルギー資源として、最近クローズアップされているのがメタンハイドレートである。この物質はメタンと氷が高圧下で結合したもので、日本領の深海域に大量に埋蔵されている。従来はこれを放置していたが、最近の深海掘削技術の進歩によって、採取が可能になった。既に試掘も開始されている。また東京大学大学院教授の湯原哲夫教授によると、中国が戦略資源として出し惜しみしているレアアースやレアメタルは、日本の排他的水域に豊かにあることが分かっている。これも最近に於ける深海資源の採掘技術の進歩により、利用できる可能性が高まった。
 食料の場合はどうか。農水省が示したデータ(カロリーベース総合食料自給率)によると、日本の食料自給率は41%で、先進他国に比べると危機的な水準だという。この危機的という刺激的な惹句は、マスコミがつけ加えたものだ。しかし嘗ての戦争のように、貿易が完全に途絶え、食料輸入ができなくなることはあり得ない。仮にそうなっても、対策はいくらでもある。そのヒントとして、自給率計算に用いられている次の数式を分析してみよう。
    カロリーベース総合食料自給率=国産供給カロリー÷全供給カロリー

 はじめに知っておきたいのは、カロリーベース総合食料自給率という概念は、農水省が勝手に捻り出したものであって、世界的に認知されているわけではない。そのため口さがない連中からは、農水省がその存在理由を誇示するために、意図的にでっち上げた概念だと言われている。
 問題の第一は、国産供給カロリーの内容である。この数値は政策によって大きく変えることができる。現在は飽食の時代なので、生産者の殆どが、高級野菜や高級魚など少量生産型を志向している。もし緊急事態になれば、あの大戦時のように芋や麦などを大量生産すればよい。また魚介類も高級魚にこだわらず、雑魚の大量漁獲に励めばよい。要するに食糧事情の緊急度に合わせて、カロリー量を増やすためのプロダクトミックスを計画すればよいのである。現在は、その必要がないというだけのことだ。
 次の問題は、全供給カロリーの内容である。簡単にいえば、上記の国産供給カロリーに輸入分を加えたものだ。これも又、緊急度や必要度に合わせて自由に操作できる。緊急時には、高カロリー食品の輸入にストップをかければよい。
 資源の定義をさらに拡大すれば、日本は世界でも最も恵まれた国の一つと言えるだろう。それをもたらすのが、地理的な条件に基づく自然環境である。たとえば、世界有数の降雨量に由来する上質の水がその一つだ。水こそ、ユーラシア大陸に立地する多くの大国が、その強大さにも拘わらず、アキレス腱として悩んでいる不足資源である。
  このほか、大量の降雨量に由来する豊かな森林や、太平洋とオホーツク海および日本海の三つに囲まれた環境は、世界に類のないほど多種多彩な生物を育んだ。因みに海の生物は、種類が世界一で約34000にのぼるという。また陸地の植物の種類は6000以上になり、これまた世界一である。先に述べた鉱物資源だけでなく、水資源、生物資源など、日本は資源大国というべきであろう。

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