2011年4月16日土曜日

いそいで復興のシナリオを描け

 一ヶ月ほど前(2011年3月11日)に発生した東日本大震災の被害の全貌は、とてもとらえにくい。地震、津波、原発事故、そしてそれに伴う放射能汚染という途方もない複合災害になってしまったからだ。とくに原発事故関連に関しては、そのトラブルが未だに進行中である。いろいろな対策が講じられてはいるが、素人目にはまるでモグラ叩きのように見える。事故発生以来すでに1ヶ月を越えるというのに、次々と新しい問題が発生する。そのためにシーベルト、ベクレル、シーピーエムといった専門的な数値がやたらに発表されるが、その意味するところが分かりづらい。政府は、ここらで一般国民にも分かりやすい説明をする必要があると思う。菅首相は原子力工学に詳しいのが自慢のようだが、なぜそうしないのだろう。あまりにじれったいので、首相のために我々が何を知りたいかを、3つに分けて整理して差し上げよう。
 要点の第一は放射能の数値はどうであれ、それをどれだけ浴びたらいけないのか。継続的な被浴に問題があるというなら、その期間。たとえば一日何時間で、何週間とか。また食物として摂取する量に問題があるならば、その種類別の数値。細かい条件別に、これらのデータを一覧表にして配布してほしい。
 要点の第二は過去における災害データの収集だ。広島に原爆を投下されたのだから、日本には放射能被害に関する知見が十分にあるはずだ。当時、広島には永遠に人間が住めないとまで言われた。また夥しい数の死傷者が出たが、その一方で生き延びた人もいた。それを可能にした条件は何だったのか。そもそも被爆地周辺のシーベルト数値は、福島の場合と比較してどの程度の差になるのか。さらに言えばアメリカやロシアのデータや情報は入手できないのか。たとえばアメリカは、広島のデータを持ちかえっていて日本以上に蓄積しているはずだ。さらにその後も、マリアナ諸島やネバダ砂漠で実験している。最近ではスリーマイル島の事故経験もある。一方のロシアも、チェルノブイリのデータを十分持っている。アメリカやロシアは、日本政府の対応を批判するだけでなく、これらの経験に基づく対策を教えてくれるよう要求すべきだ。
 要点の第三は復興の見通しと、その大まかなスケジュールだ。日本には壮大な復興の歴史がある。1945年に敗戦を迎えたが、その時点での全国に及ぶ戦禍は、筆紙に尽くしがたいものだった。今回の状況とは比較にならない。それでも3年後、つまり1948年頃には何とか復興の兆しを見ることができた。さらに1950年から1954年にかけては、後に復興期と言われるほど産業全体が軌道に乗り始めた。その後は多少の曲折はあっが、1990年までは一貫して安定成長の路線を走ってきた。大まかに言って、あれほどのダメージを受けながら、わずか3年ほどの短期間に産業および経済再建の目途をつけたのだ。政府はこの実績から教訓を学び、今後の見通しを明確かつ早急に示さなければならない。

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