3月31日、フランスのサルコジ大統領が震災慰問のために訪日した。官邸を空っぽにして、総指揮者としての役割をすっぽかし、ヘリコプターで原発の事故現地に赴いた菅首相の、ちまちましたパフォーマンス的言動と比べて、そのスケールの大きい行動力に感嘆する。
フランスでは発電量の80%を原発に依存している。だからこれが否定されるような事態になれば、産業政策の根幹に関わる重大事に発展するのである。しかし同じユーロー加盟国であっても、ドイツは原発の導入に消極的だった。最近になってメルケル首相の努力で、ようやくやる気になっていたのに、折悪しくも今回の事故だ。おかげでドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク州では、27日にあった州議会選挙で連立与党が敗北し、環境政党・緑の党が躍進することになった。その結果をみてメルケル首相も、「福島原発の大事故を巡る議論が敗因となったのは明らかだ」と述べざるを得なかった。かくしてフランス大統領の来日は、まさに国のエネルギー政策の成否に関わると判断した、果敢な政治戦略的行動なのである。
そもそも日本とフランスは、原発の発電量において世界の3位と2位をしめるのだが、今回のような非常事態が発生すると、産業を守ろうとする政府と、そうでない政府の違いがはっきりあらわれる。サルコジ大統領にはフランス一の原発企業のトップも同行し、あらゆる援助を惜しまないと明言してくれた。
しかし我が国の首相は、まず東電を罵倒し、そのあとヘリコプターで現地を視察するというパフォーマンスを演じてみせた。このアクシデントを政治的に利用しようとする思惑が見え見えだった。サルコジとは、動機もやり方も全く違うのだ。そもそも菅首相が市民党を自称していた野党時代は、原発には反対していたはずだ。彼の当時の主張は、大切なのは消費的な市民生活だけであって、それを保証するための企業の産業活動には極めて冷淡で、ときには否定的でさえあった。しかし評論家ではなく、政治の当事者となった今となっては、産業振興の重みに気づいたというのだろうか。
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