1990年代から2000年の初頭にかけて、日本の製造業の多くは自信を失っていた。それに反比例するように、競争力が強まった韓国や台湾の企業は意気軒昂たるものがあった。日本の製造業が凋落した原因については、当時もいろいろと論評されたが、要点を絞ると以下の3点であった。
1. 日本企業は総花的かつ横並び的な経営を行っていた。そのため製品分野は拡散し、経営資源の活用に無駄が生じた。これに対し韓国や台湾の企業は、IT関連の成長分野に焦点を絞って攻め立てた。
2. 地球規模での市場拡大に対して、適切な対応策を講じなかった。途上国が中心になる新需要の特徴は高品質より低価格であるが、それを読み違えて過剰品質ともいえる製品を作りつづけた。
3. 特許戦争で遅れをとった。日本の競争力に危機感を抱いた欧米系の企業は、強力な国の支援のもとに特許戦略を推し進めた。これに対しアジアの孤児である日本は、いろいろなハンディを背負い完敗した。
しかし日本の製造業は、その後不死鳥のように復活し2004年以降は再び元気を取り戻している。その主な理由は、上で示した弱点の第1を完全に払拭したからである。さらに第2の弱点については、厳しい反省によって再び強みに変えることができた。とくに生産財の分野では、日本の高精度で信頼性の高い製品技術は他の追随を許さない。低コスト製品で世界を席巻しつつある中国といえども、日本製の生産設備によって支えられている。
こうなると残るのは第3の問題だけになる。ただ具合のいいことに、生産財は生産量が少ないので、量産品のような国を挙げた特許戦争にはなりにくい。かくして日本の製造業は、大量製品を狙わずに多種少量生産に舵を向けたのである。この戦略は今のところ上手くいっている。もちろん大量消費財であっても、自動車や液晶テレビのように高度な技術を要する製品はますます強さを発揮している。したがって日本の製造業は、これからも高度な技術やスキルを必要とする分野においてますます強みを発揮することになるだろう。
0 件のコメント:
コメントを投稿