パソコンOSの陣取り合戦が、マイクロソフト製Windowsの圧勝に終わったのは約10年前のことだ。そして現在、インターネット検索の市場で圧倒的なシェアを誇るのはグーグルである。膨大な情報を検索するツールとして、このソフトは信じられないほどの威力を発揮する。洪水のような情報に翻弄される現代人にとっては、まさに救いの神といえるだろう。
Windowsを知識情報処理のインフラとするならば、グーグルはそれを使って知識情報検索を行う人のための極めて性能のよいツールである。何しろ世界中に張り巡らされたウェブの、30億に及ぶサイトに瞬時にアクセスして、関連する情報をくまなく検索できるのだ。かくして知識情報処理に関する課題は概ね解決できたのだろうか。そうではない。むしろ更に大きな課題が明らかになってきたのである。
そもそも我々が、知識情報を検索するのは何らかの目的があるからだ。検索すること自体は目的ではない。課題に関連する情報を検索収集し、それを材料にして新しい情報を創造したり、評価判断して意思決定するのが目的である。つまり知識情報処理のプロセスは、情報の蓄積や検索だけではなく、それを原料にして新情報を生み出すプロセスも必要である。これこそが知識情報処理の最終的な目的である。
かくして我々は、知識情報処理技術の本質的なテーマを発見した。21世紀はマイクロソフトやグーグルが築いた技術をベースにして、この新らしい課題に挑戦しなければならない。このテーマを解決する知識情報処理技術は、従来とは全く違うアプローチが必要だろう。比喩的にいえば、従来の技術は物理学的発想に基づいていた。しかし新しい知識情報処理技術は化学的発想を参考にしなければならない。情報の物理的処理とは、単位情報を検索したり分類集積したりするが、単位情報そのものを変質させることはない。しかし情報の化学的処理とは、単位情報の組み合わせによって化学反応を促し、元の情報を変質させなければならない。つまり新情報を創造することになるのである。
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