ITの発達によって、社会のあらゆる分野で大変動が起きている。百科事典も例外ではない。インターネットに蓄積されたデータベースや、グーグルなどの検索技術によって殆ど使う必要がなくなった。しかも変化の内容は、たんなる情報の内容や検索技術だけではなく、知識のあり方そのものに及んでいる。百科事典の陳腐化は、その象徴的といえよう。
まず百科事典では関連する文献や、情報の出所を明示しない。だからより詳しく調べることができない。次に項目が極度に限定されている。たとえば平凡社の世界百科事典には、「日本文化」という項目がない。その理由は「日本文化」という概念定義が学問的に確立していないからだ。しかし日本料理、日本映画、日本画などの項目はある。この場合は概念がはっきりしていることになる。
一方グーグルでは「日本文化」でも検索できるし、関連文献も数多くあらわれる。つまり定義が確立していなくても、その用語が流通していれば検索することができる。これは情報を求めるものにとって極めて便利だ。現在のように情報が高速大量に作り出される時代は、いちいち概念や用語の定義が確立するまで待つことができないからだ。
かくしてアカデミックな研究者は別として、実務の世界に生きる情報利用者は、タイムラグのある百科事典から離れ、インターネットが提供する情報検索システムに依存することになった。もちろんインターネットで得られる情報は玉石が混淆している。したがって情報収集や利用に際しては高度な判断力が必要だ。
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