ゴードン・チャンはその著作で、WTO加盟によって中国の経済構造は大きく変化するが、それをきっかけにして崩壊すると予言した。その真偽はともかく、産業構造の変化が社会経済に及ぼす影響はかりしれない。たとえば私の故郷は、かって名木飫肥杉の産出で栄えた。その要となった服部家と川越家の繁栄は、すでに江戸時代の中期から始まっていたという。その豪邸の面影は、今でも少年時代の私の記憶に残っている。
しかし1990年代の初頭30年ぶりに帰郷したとき、川越家の邸宅は跡形もなく荒れ果てた更地になっていた。かろうじて服部家の建物は残っていたが、既に人手に渡っていた。300年近くも続いた名家が、たった30年の間に姿を消したのである。明治維新や敗戦という激動期にも生き残った強靱な事業が、あっけなく崩壊した。この短い期間に起きた経済構造の変動が、如何に過酷なものであったかを思い知らされたのである。
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