2007年7月11日水曜日

石原知事の複式簿記論

石原知事は国や地方自治体の財務管理を単式簿記から複式簿記に変えるべきと主張し、実行に移した。まさに卓見である。そもそも単式簿記は現金の出入りしかきろくできない大福帳である。これを複雑な財政運営に使うのは間違っている。長年にわたり財政学者はそれを指摘しなかったが、見識を疑わざるを得ない。もちろんこの方式では、国の財産も正確には管理できない。とくに資産の把握ができない。単年度に限った予算であれば、これでも何とか処理できる。しかし長期的な財政戦略が必要な昨今、単年度主義そのものが問題になっている。しかしそれを改めようとしても、単式簿記では処理できないだろう。複式簿記であれば、当然ながら貸借対照表に産と負債が表示される。しかし単式簿記で運営されている現状ではそれができない。すなわち日本の国家財産は貸借対照表で記録されていないので真実の姿が不明なのだ。たとえば減価償却という概念を導入できない。そのため長期間使用する固定資産であっても、すべて1年限りの経費になってしまう。したがって膨大な固定資産があっても、それを正確に把握できない。近年、国債などの国の借金だけが問題になっているが、複式簿記であれば借方欄に資産が計上されているはずだ。その資産金額と借金の対比で、本当の赤字がわかる。今はそれができないのだ。健全財政論は単年度だけで議論しても意味がない。

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