2007年7月14日土曜日

イカロスの墜落

ブリューゲルが描いたイカロスの墜落は不思議な作品だ。題名になっているイカロスの墜落場面そのものは、画面の片隅に小さく描かれている。うっかりすると見逃すほどである。その傍らには一人の農夫が何事もなかったように作業を続けている。この大事件にも全く関心を示していない。ブリューゲルの意図は分からないが、私は彼の人間の卑小さに対する痛烈な皮肉のように思われる。世間にどのような大事件があろうとも、大衆の殆どは当面の自分の生活しか考えない。われ関せずである。その無知とエゴと逞しさには脱帽するしかない。大衆のこの真実は彼が生きた中世どころか、21世紀の現在も全く変わらない。ブリューゲルはそれを見通していたのだろうか。

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