建築家安藤忠雄のデザインが人を引きつけるのは何故か。その秘密は独特の方法論にある。彼はまず依頼主の潜在的なニーズから出発する。それが何かは、依頼主さえわからない。そのニーズは意識下にあるからだ。安藤はそれを追求し仮説に到達する。たとえば寺院建築の場合をみよう。彼は檀家の人々の潜在ニーズを、「安らぎ」というコンセプトで表現した。
次はその設計コンセプトを、どのようにデザインとして具体化するかだ。コンセプトは抽象概念だが、これを具象化しなければならない。この飛躍こそデザインの本質だ。しかし、安藤もそのプロセスを説明することはできない。結果つまりプロダクトとしての設計しか示せない。その代わり彼は、心構えを述べている。それは格闘だという。格闘の結果としてデザインが生まれるという。ボクサーとしての体験がそのアプローチを生んだのか。興味深いところだ。
いずれにしても、コンセプトから具体化への「転換」不可欠だ。しかしそのメカニズムを説明することは出来ない。この点は創造プロセスの分析で、いつも逢着する難問だ。
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